洗脳とは

洗脳とは、以下の例(新人研修)のような原理によるもので、基本的な手順は以下の5つです。

1.
隔離
ターゲットを日常から引き離します。


大体、研修は泊まってやります。「どこかの施設で泊まりで…」とね。で、この施設がたいてい人里離れたところにあるといいます。当然外出禁止で、施設外に出られない状態で、連絡もダメです。また、携帯電話の持込禁止というのもあります。
食事もお風呂も睡眠も施設内。その会社の人間だけの環境で世間とは関係のない、純度100%の会社環境を作りあげています。


2.
鬱化
隔離して逃げられなくしてから、身体にも精神的にも弱らせます。


逃げられない環境、その会社の価値観以外に入ってこない環境を構築した上で、会社の価値観に染まっていないもの=新人の人格を否定します。そして体力的に精神的に弱らせていきます。
とにかく大声で、頭ごなしに怒鳴りつけるというのがこの時点での定番です。○○会社の場合だと「○○社員三誓暗唱」っていうのがそれにあたると思います。絶対に無理な課題を出して、それができないとなると怒鳴ります。実は課題が達成されたかどうかはどうでもよくて、怒鳴るのが目的なのです。「できなかった」という精神的な苦痛に、怒鳴るという直接的な精神的な苦痛をミックスするのです。
体力的な弱化を狙う場合の定番は長距離走です。土のうをかついでとか、むやみやたらに穴を掘らされるなど。運動させる目的などを伝えないのも効果的です。とにかく疲れさせます。レンジャー訓練に似ているプログラムが多いのもそういう理由なのです。
あとは寝させないのも効果的です。夜に非常召集をかけるとかして、体力回復を妨げるわけです。
人格を否定し、体力的に精神的に弱ったら洗脳の準備段階は完了です。要はここまでの段階で、その人の人なりを空っぽにしてしまいます。抜け殻のようにするのです。そうすれば、教え込みたい内容がスラスラ入っていくわけです。入れ物に物を入れたいのであれば、まずはその入れ物を空っぽにすることが必要になります。


3.
刷込
弱ったところで、洗脳する内容を記憶の中に埋め込みます。


はい、ここからが教え込むターンです。ここから企業の理念とか考え方とか、その企業にとっての善悪を叩き込みます。その善悪が一般社会とずれているかなんて気にしません。隔離されているので、それを違うと感じさせてくれる日常はそこにはないし、体力的に精神的にボロボロになっているので、「それはおかしい」と考える余力は残っていません。
最近では、ここまでの段階をふまずに、先ずは「瞑想」させます。瞑想することによって「変性意識状態」にさせてから、この刷り込みをやるのです。
先輩社員の成功談。自分も同じように頑張れば先輩のようになれる。先輩のようになるためにはどうすればいいのか。
そのロードマップを示せばいいのです。
「気合だ!」「努力だ!」「寝ずに頑張れ!」
理論はないし、怪しいもんだけれども、これが何故か効いてしまうのです。弱っている人間には特に効きます。


4.
安定
弱らせるのを止めて、刷込状態を安定させます。


そしてここで成功体験を与えます。別に大したことじゃなくてもいいのです。何か成功させ、その成功を褒めるのです。創業社長が登場して「よくやった!」と抱きしめるなんていうのも定番です。抱きしめられた人間にとっては、それが何よりも「受け入れられた」というご褒美になるし、その光景を見ていた他の人間にとっては、自分もそうなりたいという意識がはたらきます。冷静に考えればそんなの嬉しくないよということでも、ここまで洗脳の段階が進んでしまっていると、何故かとんでもないご褒美になってしまうのです。
研修の最後の夜、打ち上げの段階になって幹部たちが妙に優しくなってお酌をしたり、あるいは食事そのものがご馳走だったりします。あるいはお風呂で背中を流してくれたり、「ごめんな厳しくして」と謝ってきたりします。
目的を達成するとご褒美が待っているという関連付けをさせるわけです。


5.
強化
抜けないように、洗脳を強化します。


洗脳を定着させるために、その会社の活動をさせます。いやおうなしにその会社の人間に染めるのです。
最近の定番は、クレジットカードとかポイントカードの加入者集めです。ノルマを与えて不達成者は鬱化からやり直しです。つまり再研修です。できた人はご褒美タイムなのです。
「会社のためになる活動が自分のためになる」と思い込ませたら洗脳は完成です。
ブラック企業の新人研修では、このプロセスを一気にやるのが基本です。脱落者が出ても気にしない。洗脳には合う・合わないがありますので、合わない人間をふるい落とします。どうせ内定時点での研修の場合、人件費が発生しないですからね。
雇用契約前に不適合者をはじき飛ばしておきたいのです。

洗脳とは、以下の原理によるもので、基本的な手段は以下の5つです。


隔離
 ↓
人格破壊
 ↓
刷り込み
 ↓
ご褒美
 ↓
日常化


理不尽な対応をしたり、不必要な活動をしたり、いちいち非論理的なことをするのにはわけがあるのです。


【次項目
変性意識の形成 へ】








【メインメニューへ】